Information黒潮町の防災ツーリズム
自然が持つ恵みと災いの二面性を知り、
人と自然とのつきあい方を学ぶ
太平洋に面した黒潮町は、黒潮がもたらす豊かな自然が広がっています。クジラやイルカ、アカウミガメなどの生きものが近くに暮らし、カツオの一本釣り漁業や天日塩など、海からの恵みとともに文化が育まれてきました。また、ホエールウォッチングやサーフィン・シーカヤック・ビーチコーミング・釣りなどの自然体験スポットとしても人気の町です。
一方で、黒潮町には高さ34mという日本最大級の津波が想定されています。町では「避難放棄者ゼロ・犠牲者ゼロ」を目指し、全役場職員が防災地域担当として町中に散らばり、官民が一体となって防災のワークショップを何度も繰り返してきました。結果、浸水区域内の全町民の避難カルテが作成され、それに基づいた避難道や津波避難タワーを建設、現在も避難訓練をはじめとした様々な防災対策に取り組んでいます。
昨今、日本だけでなく、世界中で地震・台風・土砂災害・噴火・洪水・森林火災など大規模な災害が多発しています。今や安全なところはどこにもないかもしれません。そんな中で私たちに大切なことは、「自分の命は自分で守る」ために、“自らが考え行動する力”を身につけることではないでしょうか。
黒潮町の防災ツーリズムは、自然が持つ恵みと災いの二面性を理解し、その自然と上手につきあうための文化や知恵を学ぶプログラムを提供しています。
避難訓練をはじめ、日ごろから欠かすことのない備品の点検など、常に防災への高い意識を持ちつつ、犠牲者ゼロを目指す町の人々の想いや取り組みについて知り、また、あらゆる状況を想定した答えのない問題に対して意見を交わすことで、生存の可能性を高める柔軟な発想も身につけます。
海の恵みいっぱいの自然体験や地元食材による食体験も豊富にありますので、防災について学びながら、ぜひ黒潮町の自然の魅力にも触れてください。
Disaster Prevention Facility防災施設
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津波避難タワー
2012年に内閣府が公表した南海トラフ巨大地震による津波高及び震度分布の新想定を受け、町内では地区毎に現地点検やワークショップを実施し、避難道等の整備計画を作成しました。その結果として、町内には避難道約250路線、津波避難タワー6基が整備されています。避難困難区域である町内6地区(佐賀地区、横浜地区、早咲地区、浜の宮地区、町地区、万行地区)に建設された津波避難タワーは、津波から町民の生命及び身体の安全を守っています。
また、日頃から地区の防災活動や避難訓練に活用されています。
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黒潮町缶詰製作所
黒潮町では、2012年に内閣府から公表された南海トラフ巨大地震の新想定で34mという日本最大級の津波が想定されたことをきっかけとして、新たな地場産業となる株式会社黒潮町缶詰製作所を2014年3月11日に設立しました。東日本大震災では、自治体が備蓄していた非常食や避難所に届けられた支援物資の缶詰に原材料表示がないものがあり、食物アレルギーが怖くて食べられなかったという声をもとに、8大アレルゲン不使用にこだわっています。
「おいしいから食べる。食べるから日常的に購入する。それが備えになる。」という循環備蓄(ローリングストック)の提案として「毎日食べたい非常食=日(ひ)常食」を目指し、味・栄養バランスの両方を備えた製品づくりに取り組んでおり、町内に2箇所ある道の駅などで販売しています。
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備蓄倉庫・防災倉庫
黒潮町では「犠牲者ゼロ」を目指す対策のなかで、町内全61集落で防災ワークショップを開催し避難場所・避難道の見直し・点検を行いました。そこで提案された避難道や避難場所を整備し、避難場所には備蓄倉庫や防災倉庫が設置されています。
また、津波浸水予想の地域では、住民一人ひとりの避難計画やルールを決め、津波避難タワーの備蓄倉庫へ、世帯毎の保管箱を用意して備蓄するなどの取組を進めています
High School Students Summit「世界津波の日」
高校生サミット in 黒潮
世界30ヶ国の高校生が集まり
みんなで防災について話し合いました
国連総会において「世界津波の日」が制定されたことを記念し、2016年11月25日・26日に南海トラフ地震による甚大な津波被害が想定される黒潮町で世界で初めて「世界津波の日」高校生サミットin黒潮が開催されました。サミットには、世界30ヶ国361名の高校生をはじめ、防災担当大臣や各国大使など総勢739名の方が参加されました。
このサミットでは、参加した高校生が「自然災害を知る」、「自然災害への備え」、「自然災害からの復興」の3つの分野に分かれて、それぞれの国の取り組みを発表し、意見交換を行いました。
また、高台への津波避難訓練や津波避難タワーの見学などを通じて、高知県及び黒潮町の南海トラフ地震対策の取組を学んでいただきました。そして、それぞれの国の素晴らしい取組の発表を踏まえ、活発な議論がなされ、その成果として、参加者の総意のもと「黒潮宣言」が採択されました。
「黒潮宣言」では、世界の津波リスクと津波による甚大な影響を認識し、先人たちの防災・減災の志を後世に伝える責務を引き継ぎ、津波災害をはじめとする災害から一人でも多くの尊い命を守るため、できうる限りの努力をする決意が宣言されています。
Local Efforts黒潮町の防災の取組み
あきらめない 揺れたら逃げる
より早く、より安全なところへ
2012年3月31日に、国が発表した南海トラフを震源域とする巨大地震による津波の想定に、黒潮町には激震が走りました。「34.4mの巨大津波」との想定に町民からはあきらめに似た声が聴かれ、“避難放棄者”を多く生み出すような危機感が広がりました。
黒潮町で会議を重ね、黒潮町における南海トラフ地震・津波の防災計画は、「避難放棄者」を出さないという基本理念をもって構築することとしました。合言葉は「あきらめない 揺れたら逃げる より早く、より安全なところへ」とし、最大津波高34mの町でも犠牲者ゼロをめざし防災の取組を推進しています。
その取組の一つとして防災地域担当制度を設け、役場の防災担当職員だけはなく、全職員が通常業務に加え防災業務を兼務することで必要となる体制を確保しました。また、全集落でワークショップを開催し避難道、避難場所、防災倉庫の整備や津波避難タワーの建設など行ってきました。
その他にも、地域住民が自らの命と自らの地域を守るための地域特性を反映した「地区防災計画」、津波浸水が予測される地区の全世帯の避難行動調査を踏まえた「戸別津波避難カルテ」、避難所運営マニュアルを作成しています。そして、防災教育の推進や、木造住宅耐震化の促進、告知放送システムの整備を行うなどハード面、ソフト面で取り組んでいます。
今では、防災の取組が進むことで「避難行動を取れば助かる」という気持ちへ町民の意識が変化しています。
今後はさらに住民一人一人が防災に対する意識を高め、自らの命と生活を守れるよう、そして「防災が地域の文化」となるように取り組んでいきます。